思考と表現の日々

日々思ったこと感じたこと 手書きだったり写真だったり

佐世保の高校生による同級生殺害事件の家庭裁判所による決定要旨

長崎県佐世保市の高1同級生殺害事件で、少女(16)を第3種(医療)少年院送致とした13日の長崎家裁の決定要旨は次の通り。

【非行に至る経緯】

 小5当時、下校中に見た猫の死骸に引かれて猫を殺すようになり、小6時に給食に異物を混入。中学では殺した猫を解体し、人を殺したいと思うようになった。実母病死後も殺人欲求はなくならず、父殺害を具体的に計画するようになり、失敗で欲求を強めた。父は精神科に通院させたが、欲求はなくならなかった。

 高校に進学し、少女はマンションで1人暮らしを開始。通学はせず、図書館で過去の少年事件・審判を調べ、未成年者は死刑が少なく、16歳超は刑事罰の可能性が高くなると知り、16歳になる前に殺人や解体の実行を決意した。父は児童相談所や警察への相談をためらった。父が猫殺しを知り、少女はあらためて実行を決意、殺害や解体の道具を用意し、同級生と会う約束を取り付けた。

 【少女の特性】

 少女は重度の「自閉症スペクトラム障害」(ASD)で、素行障害も併発。興味を持ったことを徹底追求し、不安や恐怖の感情が弱く、決めたことは迷いなく完遂する性格という要因も重なり、非常に特殊な例だ。ASDが非行に直結したわけではなく、環境的な要因も影響している。

 【非行のメカニズム】

 猫の死骸を目撃し、生と死の境界への関心が芽生えて猫を殺し始め、視覚的興奮が高まり固執が強まった。異物混入で問題が顕在化したが、適切な保護や対応がなく、逆に周囲との違いから孤立感、疎外感を抱いた。実母の死を経験して殺人空想が増大、殺人欲求が現実感を帯びた。

 【処遇の理由】

 無防備の友人に想像を絶する苦しみを与えて生命を奪い、人の尊厳を踏みにじった快楽殺人で、残虐さと非人間性には戦慄(せんりつ)を禁じ得ない。16歳になると処分や刑罰が重くなると理解して綿密に準備し、高い計画性や殺意の強固さも際立つ。遺族は厳罰を望んでいる。

 他方、心神喪失心神耗弱に至るような精神障害は認められないが、少女の特性を考慮しなければならない。少女はいまだ殺人欲求を抱き続け、具体的改善はみられないが、「再犯したくない気持ちが強まっている」と述べている。謝罪の言葉も述べるなど変化の兆しはみられる。

 更生には、個別性の高い矯正教育と医療支援が長期間必要。刑務所はプログラムが十分ではなく、自由に空想にふけられる環境では、かえって症状が悪化する可能性がある。

 以上、再犯防止や社会防衛の観点からも、医療少年院での処遇が望ましい。見込みは厳しいが、可能な限り長期間の治療教育をすれば、矯正効果は十分に期待できる。

 医療少年院を出た後も生涯にわたり対応を継続する必要がある。今後も同様の問題を抱えた青少年が現れる可能性は否定できず、対応に取り組む体制の構築も重要だ。

(以上引用ここまで)

 

 少年の更生を念頭に置いてはいるものの、踏み込んだ決定であると認識しました。

裁判は法律を重視している。その法律は時代の変化に応じて人の気持ちを考慮して変わっていく。判決の際には法律がアップデートしきれていない部分を埋め合わせる。法律は人の気持ちを汲んでいない!と憤る人がいるが、半分はアップデートしきれていない部分に関する意見で、半分は自分の意に沿わないだと認識する。

 どこが踏み込んでいるのかというと、
処遇について「見込みは厳しい」と言及していること。ほぼ「治りません」と言ってしまっているのではないかと解釈しました。この場合、厳罰にすると同様の性質を持った者に「見つかると殺されるから」と更に陰湿化凶悪化が進む可能性があると判断したのでしょう。(ただし、犯人が生きたいという欲求がない場合を除く)

医療少年院を出た後も生涯にわたり対応を継続する必要がある。」

医療少年院を年齢の関係で出た後も、生涯対応しなければいけないということは、社会に出さず、ずっと治療と支援を続けるということを否定していません。今後、このような性質を持った人の治療にも役立てることしかこの犯人ができることはないと認識しています。厳罰に処して死刑にしてしまうと、今後同様の性質の人による犯罪が起こりにくくなるとは考えられないのでしょう。

 通常の刑罰では心に響かない人に刑罰を与えても意味がありません。

 周囲の人(被害者関係者、加害者の関係者)に対するより良いケアという視点で考えると

「今後一切この話題に触れない」
「犯人の存在はなかったことにする」

だと思うので、しばらくしたらこの記事は削除しようと考えます。